ロケットの夜間打ち上げの撮影で、きれいな弧を描く神秘的な写真をご覧になった方も多いでしょう。
これらの写真はどうやって撮るの?など疑問に思う方も居るかと思いますが、この撮影は、「一発勝負」なのです。
撮影に失敗しても、もう一回ロケットを打ってくださいというのは無理ですから、何としても1回で成功させる必要が有ります。
この記事では、ロケット光跡撮影のノウハウを余すことなくお伝えしています。撮影方法が理解して、貴重なロケットの光跡撮影にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ロケット光跡写真の詳しい技法は、記事の下の方に有りますので、是非最後まで読んでみてください。
種子島のロケット光跡撮影!失敗しないための方法をEXIF付きで解説について
2023年は新型H3ロケットの失敗での幕開け
2023年は、H3ロケットの打ち上げ失敗で幕を開けた日本のロケット打ち上げですが、引退したH2Bロケットは全て打ち上げ成功と言う偉大な結果を残しています。
H2B最終号機となったH2Bロケット9号機が、2020年5月21日未明、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げられましたが、この打ち上げが、夜間だったのです。
そして、国際宇宙ステーション(ISS)に補給物資を届ける無人補給機「こうのとり」9号機を空中で分離してミッションは成功に終わりました。
当時は新型コロナウイルス対策で、ロケット見学のための県外からの来島は自粛が呼びかけられる中、地元の人たちがその様子を見守りました。
しがないサーフィンカメラマンも、地上でスタンバイで、無事に打ち上げを祈りました。
写真メモ
打上げ光跡の写真は、念のため、関連機関の事前スクリーニング審査を受け、SNS等ネット上での公開しても問題ない事を確認済です。
また、他の機関の掲載依頼を受け、この画像の使用を承諾しており、公開されている場合が有るかも知れませんが、オリジナル画像(未圧縮Rawデータ(トリミング前)、合成前写真を含めて、当サイトが権利を所有しています。
また当記事に掲載されている画像は、ブログ用としてサイズダウン&相応の圧縮を掛けているため、オリジナル画像の品質とはかけ離れた低画質で有ることをご理解ください。
ロケットの夜間打ち上げは、2年に1回
ロケットの打ち上げは、明るい昼間に行われることが多く、また、早朝の日の出直後も多いのですが、夜間に打ち上げるのは2年に1回程度です。ロケット光跡はいつでも撮影できるわけではないのです。
夜間打ち上げの場合は、ロケットの雄姿をカメラで捉えることが出来ませんので、光だけを捉える「光跡撮影」の技法が用いられます。
これは一発勝負の撮影ですが、撮影に成功すれば、非常に貴重な写真になります。
ロケットの撮影に挑むかたなら、おそらくこの光跡撮影に挑戦してみたいのではないでしょうか。
当記事では、ロケット光跡撮影に失敗しないように、撮影方法についての注意点等も併せて紹介しています。
撮影は一発勝負
ロケットの打ち上げ光跡撮影は、完全に一発勝負です。
失敗したら、撮り直しが出来ません。失敗するリスクが大きく、プロカメラマンでも嫌がる撮影ですが、これに挑んで成功すると、素晴らしい写真が撮れます。
夜間打ち上げの場合は、機体移動が昼間!
通常、ロケットは昼間に打ち上げますから、VABから射点までの機体移動は、夜間になります。
つまり、誰でもばっちりロケットを明るい昼間に撮影することが可能なのです。
明るくなってくると、3km以内は規制がされますので、ロケットのそばに近寄れませんが、夜間打ち上げは別です。
夜間に打ち上げしますから、明るい昼間に内にロケットの機体移動が行われます。
この間、射点から3km以内でも、まだ、特に規制される前であれば、道路の観光場所からのロケット撮影等が誰でも可能なのです。
特別な意味があったH2B-9号機、発射台に「感謝 THANKS HOPE 希望」という文字
当時、プレスでも、本件は全く紹介されなかったので当サイトで紹介することししました。
コロナが蔓延し、世界中が震え上がる中での、非常に苦しい打ち上げ作業だったと思われるH2Bの最終9号機ですが、関係者のその思いが、ロケット発射台に秘められていました。
発射台に「感謝 THANKS HOPE 希望」という文字があったのです。
H2B-9号機は、未知の脅威と必死に戦ってきた技術者たちの、”特別な思い”が込められていたのです。
これは、ごった返す一般カメラマンに混じって撮影した写真ですが、いったいどれくらいの方が、この看板に気が付いたのでしょう。
300mm望遠レンズで撮影しなければちょっと見えない看板でしたが、テレビ等の報道画面にはしっかり写っていましたが、その点に突っ込むテレビ番組は全く有りませんでした。
でも、私には、打ち上げ関係者の何か秘めた思いを感じた瞬間です。
種子島のロケット光跡撮影!失敗しないための方法をEXIF付きで解説、注意点について
バルブ撮影の注意点
ロケット光跡撮影は、120~150秒の間、シャッターを開放する必要が有りますので、カメラはバルブ撮影の設定が必要です。
またバルブ撮影の木の画ないカメラの場合、インターバル撮影になります。
※インターバル撮影は記事の最後の方で紹介しています。
大型三脚とレリーズは必須
シャッターボタンを押す場合、手で押した場合、カメラがブレうことが多く、その時点で撮影に失敗しています。
このブレを防ぐためには、出来るだけ大型三脚を用意しましょう。セルフタイマーなどでシャッターを切ればブレませんが、その後もバルブ時間をコントロールするのが困難ですし、機能的にできないカメラも有るかと思います。
そのため、ロケットの光跡撮影は、レリーズの使用が必須です。
レリーズは無線式でも構いませんが、私は有線式で、ロック機構付を使っています。
約2分間、ボタンを押し続けるのも、意外としんどいからロック機構が活躍します。大体1000円程度で買えます。
ロケットの光が、目で見えなくなったら、レリーズのロックを解除し、バルブ撮影を終了しますが、事前に練習しておきましょう。
また、カメラを支える三脚は、重くて大きい方がより安定します。
三脚の重さが足りない場合は、三脚の足の部分に取り付できる三角形の布に、石ころなどを乗せることで、重量を稼ぐこともできます。
ロケット射点の位置を確認
光跡撮影は、ロケットの点火から、約90秒以上の撮影が必要ですが、この最初の発射位置の確認が大事です。
光跡の大事なスタート位置ですから、放物線を想定して、画角の隅の方に配置します。
昼間に射点の位置を確認しても、夜間は真っ暗で、目標物が見えない場合も有りますので、十分な確認が必要です。
マップ等を利用して、発射位置の方向を確認
打上げ射点が目視できる場合は良いのですが、見えない場合は、明るい内に、射点の正確な方向をスマホのGPSなどで確認しましょう。
夜間では目視で確認できない場合が多いので、角度を頼りにカメラのアングルを決めるのです。
スマホのGPSセンサーに誤差が有れば、事前に把握しておきましょう。ロケットの光跡のスタート位置は、光跡撮影では大変重要な要素です。
射点までの距離をGPSで把握
撮影する場所から射点までの距離をGPSで測っておきます。この距離と、表-2を見て、打ち上げ光跡が使用するカメラレンズの画角に収まっているかを、事前に確認しましょう。
撮影場所選定の注意点
観客が居る場所は避ける
これは、バルブ撮影中に、三脚を蹴られて、画角がずれてバルブ撮影が失敗することを防ぐためです。
打ち上げ時の観客の方々は、最初の20秒程度から、徐々に引き上げ始めます。最後まで見ている方は少ないかも知れません。
この時、夜間ですから、カメラに気づかず、前を通り過ぎたり、カメラにぶつかってくる場合が有ります。
もちろん、自分で三脚を誤って蹴ってしまう場合が有りますから、十分注意しましょう。
バルブ撮影の大敵は、LEDライトやカメラのフラッシュ
打上げ観客が居る場所での光跡撮影の最大の敵は、観客が持っているLEDライトと、カメラのビデオライトや自動フラッシュです。
こんなもので、ロケットが写るはずもないのですが、自動的に発光されますので厄介です。
バルブ撮影中のカメラの近くでLEDライトやビデオライトを点灯されると、こちらの苦労が水の泡になりますし、また、光跡を撮影しようとする他の一般の方のカメラのフラッシュで、同様にこちらの写真がダメになります。
光跡撮影場所は、近くに人が居ない所を選ぶべきです。
自動車のヘッドライトも大敵
種子島の場合は、交通量が少ないので、あまり気にする必要は有りませんが、バルブ撮影中に、車のヘッドライトを点灯させた車がカメラの方に走ってくると、やはりバルブ撮影は失敗します。
自動車のヘッドライトは、強烈ですので、道路から近い場所での撮影は避けましょう。
虫よけも大事
必然的に、草むらなどの、開けた場所ではない所での撮影になりますから、夏場などは虫よけスプレーが必須です。
夜霧に注意
種子島の日没直後は特に「海霧」が発生して、レンズが結露しやすくなります。
星空撮影用のレンズヒーターが有ればこれを使うのがベストですが、ない場合は、マメにレンズの結露を拭き取る要が有ります。
職質に有ってしまった場合
夜間に人気のない場所でカメラを構えますから、職質に有ってしまう場合も有るかもしれません。
ロケットの光跡撮影と説明しても、通じないかも知れませんので、このような状況では、当記事を提示して説明するのがベストかと思います。
使用する広角レンズの確認方法
GPSや地図などで、射点までの距離は把握できたでしょうか?
今度は使用するカメラレンズ(おそらく広角レンズかと思います)の画角の確認です。
ロケットの光が見えるのは、SRB-A(個体ロケット)分離~せいぜい、フェアリング分離辺りまです。
光が見えてる時間はさらにおよそ120秒程度。
目ではとらえられませんがCCDが捉えているかも知れませんので、念のため30秒を加算して、バル微時間は150秒程度と思われますが、バルブ撮影で、あまり長い時間を撮影したくないですよね。必要以上に長時間のバルブ撮影は時間の無駄と、ノイズの原因になります。
私の場合、画像のEXIFを確認すると、シャッター時間は154秒となっていました。
150秒程度開放が出来れば、バルブ撮影で綺麗なロケットが描く光跡の放物線が撮影できます。
撮影は最初の2分間
光跡撮影で、10分とか15分とか書いてる場合が有りますが、それはロケットだけでなく、1枚の写真に星のグルグルを入れたい場合です。
15分も見える範囲にロケットが居るはずも有りませんが、せっかくなので、星の巡る様を写真の撮ろうというものです。
ロケットは、その目的などにより、飛行経路が違いますが、光跡をすべて画角に納めるために、JAXAがネット上に公開している過去の打ち上げデータから、当サイトでそれらを分析しています。
したがって、この記事を見た皆さんは、面倒な計算する必要は有りませんが、厳密に確認したい方のために簡単に紹介します。
まずロケット光跡の最大角度を算出
ロケットは、高度をどんどん上げていきますが、実際には地球の周回上に沿って高度を上げていきます。
地上からの見た目には、きれいな弧を描いて、頂点を過ぎてから下がっていくように見えます。
光跡の見た目の放物線の最大高さになる位置を、過去のロケット打ち上げ10件のデータ(ネット上に公開されているデータ)から想定します。
また、ロケットには、衛星の種類によって、色々な軌道が有りますが、大気圏での軌道は撮影できませんので、地上からの最初の2分間程度の、光跡撮影に必要な、最初のおおむねの仰角が判れば良いことになります。
また打ち上げルートは、衛星の運用位置によって、東ルート、南ルート等が有りますが、打ち上げ最初の2分程度では、一定方向と考えて良いと思います。
つまり、ロケットは、初めの1~2分間は、安全な海の方向、つまり射点から見て、東側に向けて打ち上げるのです。
射点の西側での撮影は、弧が縦長にとんがる
ロケット光跡撮影は、美しい山なりの放物線を撮りたいはずですが、場所によっては、きれいな放物線にならず、非常にとんがった放物線になります。
種子島では、射点の西側に位置する場所は、宇宙ヶ丘公園がそれに該当します。
種子島の宇宙ヶ丘公園で、ロケット光跡を撮影すると、野球でいう、「キャッチャーフライ」みたいな光跡になります。
それは射点の西側から光跡を撮影した場合です。
東側は海上のはずですので、九州地区から撮影する場合は、ほぼ考慮する必要は有りませんが、遠洋の海上や離島からの撮影は、確認が必要です。
したがって、ロケット光跡撮影は、ロケット射点を南か北に見た位置での撮影が大事で、450度程度ズレると、ちょっと変わった放物線になることが予想されます。
※いびつな放物線でも、もちろん味が有って良いのですが、念のため書いています。
ロケットの飛行経路は考慮不要
ロケットの打ち上げ経路は様々ですが、最初の2分間だけ見ると、初めは安全な東に打ち上げてから、次第に経路を大きく変更していきます。
具体的な例を、H3の飛行経路図で示します。
図の中で、光跡撮影は、SRB-A燃焼終了まで程度、長くてもフェアリング分離までですから、赤丸の「フェアリング分離」の、その遥か手前、本当に、航路のわずかな始め部分、図の中では約2-3mm程度の範囲であることが判ります。
したがって、ロケットの号機ごとに変わる、南打ちや東打ち、衛星の運用高度などは、だいぶ先の話ですから、光跡撮影には全く関係ないのです。
画像引用元:JAXAプレスリリース
放物線の見た目の頂点を画角に入れる計算
見た目の放物線の頂点は、実は追跡用のパラボナアンテナの運用最大仰角のデータが有れば完璧ですが、一般的な撮影ですから、打ち上げ後1分程度、「SRB-A分離前後」と想定して計算します。
※当サイトでは、ロケット光跡がカメラレンズの画角に収まるよう、およその角度を計算しています。
これによると、ロケットのSRB-A分離時点では、水平距離で33.3km、高度が51.1kmの地点に居ますが、どのロケットもほぼ同じ結果でした。
カメラレンズの画角に入れば良いという観点から見ると、どのロケットも同じ設定で良さそうです。
(地球の丸みは、誤さの範囲ですので無視しています)
イプシロンは、観測距離が近いので、かなりの画角を必要としていますが、遠くから撮影すれば問題はないでしょう。
撮影する場所と射点の距離から、必要な画角(垂直方向)を算出
表1の1分後の距離と高度データ、そして撮影する場所と射点の距離から、必要な画角(垂直方向)を算出します。
単純な三角関数で算出していますが、距離別の一覧表は以下の通りです。
光跡撮影は、射点からの距離によって、カメラレンズの焦点距離を選ぶ必要が有りますが、目安としての一覧表を作成しています。
例えば、射点までの距離が10kmの地点での撮影は、垂直方向が50度、さらに余白や誤差を考慮し、10度を加算して、実際には垂直画角が60度ほど必要と算出しています。
10km地点では、レンズの焦点距離に換算すると、35mmフルサイスの場合、18mmより短いレンズが必要で有ることが、表-2より判ります。
リフレクション撮影(海などに光跡を反射させ、上下に光跡を写す写真)の場合は、倍の画角が必要です。
カメラの画素別の換算一覧表(参考)
カメラの画素が、35mmフルサイズでない方も居ると思いますので、以下の表が役に立つはずです。
35mmフルサイズと、代表的な画素サイズ別の比較表です。同じ焦点距離表示でも、CCDが小さい場合、特にCCDがマイクロフォーサースの場合は、同じ焦点距離でも、画面に光跡がおさまらない場合が有りますので注意が必要です。
APS-Cの画素数等は、カメラメーカーにより、画素数が微妙に違いますので、おおむねの値です
広角レンズは、非常に高価ですが、メーカー純正品よりも、シグマの広角レンズが使いやすく、高性能です。
垂直方向が画角に入れば、水平方向は余裕
光跡撮影は、放物線の頂点が画角に入れば、水平方向はまず画角に収まります。
垂直方向の画角だけしっかり確認しましょう。
ロケット光跡撮影に挑戦!失敗しないための方法をEXIF付きで解説詳細
長い撮影準備の説明になってしまいましたが、光跡撮影に使用すべき広角レンズの焦点距離が判明したと思います。
さて、ここから「ロケット光跡撮影」の方法についての説明です。
バルブ撮影(本番)前に、星空の写真を撮っておくと、合成写真が可能
バルブ撮影前に、夜間の星空写真を撮影しておくことをお勧めします。
光跡単体写真では、ちょっと味気ない場合、星空写真と合成することが出来ます。
星空は、長時間露光による、「星の光跡グルグル」でも良いですし、普通の星の写真でも良いです。
重要なことは、カメラを本番撮影状態から動かさないことです。
事前撮影(事後でも可)のサンプルです。光っている場所が、ロケットの射点です。
これは、本番のバルブ撮影と設定が大きく違います。真っ暗な中での設定変更ですから、ちょっと苦労するかも知れません。
事前撮影写真のEXIF(参考)
使用レンズ35mm10mm f=5.6、53秒、ISO=1600(星が写る設定ですが、時間が長めなので、星がちょっと流れてます)
事前撮影は、たくさんとっておくと良いです。
たまたま飛行機が通過して、空に不本意な点線が写っていたなどを避けることもできます。
H2B9号機は、ブルーライトアップが実施され、青い光が空に!
H2B9号機は、コロナの真っ最中の打ち上げで、医療関係者への感謝等の意味を込めて、ひっそりと「機体のブルーライトアップ」が行われていました。
そのため、青い光が夜空に写っていますが、非常に貴重な瞬間でした。
これも、マスコミには全く取り上げられることがなかったのですが、おそらく特別な思いを込めて、機体のブルーライトアップを実施したのでしょう。
カメラマンも、H2B-9号機の夜間打ち上げ光跡撮影は、何としても成功したいと感じた瞬間でした。
光跡の本番の撮影
しっかり準備をしてきましたが、万が一「打ち上げ延期」になった場合、知らずに待機していた場合、無駄になってしまいます。
打上げ時間前に、ロケット打ち上げライブ中継などリアルタイムで確認できる中継を見て、打ち上げが中止になっていないか、打ち上げ時間が変更になっていないか確認しましょう。
ロケットの打ち上げは、カメラは、距離が近い場合は、真昼の設定でOKですが、距離が遠くなると、光が弱くなり、星空撮影と同程度でOKとなります。
距離が近い場合はNDフィルターが必要
私は、約3kmに位置での撮影ですから、いくらカメラの絞りを絞っても、真っ白な写真になってしましますし、絞りすぎると回析現象が出て、画像におかしなフレアが出てしまいます。
そこで、光量減少させるためNDフィルターを使用しています。私の場合は、ND1000ですが、一般的にはND400でも大丈夫でしょう。
射点と撮影場所の距離が遠くになるにしたがって、距離の2乗に反比例して、NDの数値を下げていきます。
距離が3kmならND1000、2倍の6kmなら1/4のND250(200-400程度)、3倍の9kmなら1/9のND100、それ以上なら、ほぼNDフィルターなしで撮影が可能です。
これは、ISO500の場合です、NDの値以外に、絞り値を変えることも有効です。絞りは、数値の倍数の2乗分の1になります。
(例)例えば、絞りを4から8(2倍)にすると、光量は1/4になりますが、絞り値が22辺り以上では、強い光に対して回析現象が発生しやすくなります。
鹿児島(桜島)からの撮影ならば、NDフィルターは不要
ロケット光跡撮影は、射点に近づくほど、NDフィルターが必須になりますが、鹿児島の鹿児島湾(錦江湾)あたり、桜島を背景に撮影する方が、通常の星空撮影とほぼ同じ条件で撮影可能ですので、私のおすすめです。
光跡撮影に最適の場所は、皆さん秘密にしていますので判りませんが、種子島の大崎射点と、桜島を直線で結んだ先が、光跡撮影のベストポイントになりますから、現地を歩いて研究してみてください。
桜島を背景にして、錦江湾の水面リフレクトの光跡写真の撮影ポイントを探す場合、写真下の地図を縮小して、吉信射点と桜島の中心を結ぶと、その先に姶良市と霧島市のあいだ辺りの海沿いの地点になりますが、発射地点が見えません。
桜島を背景視した光跡ポイントは、ロケット発射地点が桜島に隠れないポイント、つまり、「鹿児島港新港南防波灯台」や「与次郎ヶ浜」あたりで探すと良いでしょう。
また、光跡が綺麗に海に写るリフレクションを狙いたい場合は、桜島から撮影するのも方法です。
いずれも、光跡撮影をイメージする場所を、地図で射点が桜島で隠れていないかなど、事前の明るい内に現地で確認をすることが大事です。
地図を拡大縮小して、確認してみてください。
また、種子島に来て光跡を撮影するのは、距離が近く、かなりの広角レンズが必要ですし、光が強すぎるため、難易度が高いので注意が必要です。
近距離では、打上げ最初の閃光は撮影しない
近距離での光跡撮影は、打上げ最初のSRB-A点火時の閃光で、写真が真っ白になってしましますから、この後、撮影を続けても、既に撮影に失敗しています。
最初のまばゆい閃光がおさまって、ロケットが打ちあがり始める少し前から、バルブ撮影開始すると良いでしょう。
なお、距離が遠い場合(10k以上が目安)は、最初の閃光が良いアクセントになりますので、早めのシャッター開放が良いでしょう。
これが、光跡画像の、トリミングなしの画像です。35,,mmフルサイズで10mmは、当時世界一の広角レンズを使用していますから、だいぶ余裕が有ります。
光跡だけだと、距離が近い場合、景色が無くてちょっと寂しいですよね。
種子島の増田海岸あたりで、海面リフレクト撮影がお勧めなのですが、実際には、こんな感じになります。
光跡撮影写真のEXIF(参考)
使用レンズ35mm10mm f=8、154秒、ISO=500+ND1000
ND1000ですと、光量が1/1000ですから、ファインダーでは何も見えません。
ピントは広角レンズなので無限遠あたりでOKです。
種子島の増田海岸や、鹿児島の桜島を背景に光跡のリフレクト撮影(海に光跡が反射している)をするのが、海面リフレクト撮影の定番です。
2枚の画像を比較明合成
近距離の撮影ですので、NDフィルターを使っている結果、星が全く写って居ません。
そこで、全く同じフレームで、事前に撮影していた星空写真と合成します。
写真加工ソフトで、光跡写真と星空写真を合成しますが、それまでトリミングをしてはいけません。
画像が微妙にずれてしまうからです。
2枚の写真を合成後に、広角レンズのパースを修正や、トリミングや画像の加工をして完成です。
完成した写真がこれですが、ブログ用にかなり画質を落としています。オリジナルを是非お見せしたいところです。
打上げ光跡のインターバル撮影
カメラの連続撮影モードで、最大の30秒等に設定して、ロケットの光跡撮影をする方法が有りますので、紹介します。
最大の欠点は、光跡の一部が切れることに有ります。
切れるならば、逆に沢山切ってしまうと、面白い写真が撮れます。
この写真は、シャッタスピード10秒の連続撮影で、約20枚以上を比較明合成した得た写真です。
NDフィルターも不要なのですが、後の合成が大変です。重ねる枚数で光跡の長さが変わるのも特徴です。
手持ちのレンズでは、画角に収まらない場合などに、この技法を使うと、変わった写真が撮れますので効果的です。
また星がやたら写ってしまいますので、もう少し感度を下げてもしっかり写りますが、なにせ「一発勝負」ですから、後悔しても後の祭りです。
下の写真は、この後神秘的な夜光雲が発生するのですが、その時の打ち上げ光跡です。
光跡撮影(インターバル10秒x22枚の比較明合成)
写真のEXIF(参考):使用レンズ Batis25mm 10秒の連続撮影 f=2、ISO=800×22枚合成
もう1枚、これは、レンズの角度が不足していたので、縦長で撮影した、ロケット光跡写真を紹介します。
これも2枚の合成(光跡+星空)ですが、まだ未熟な感じです。
明け方の打ち上げなら、神秘的な夜光雲発生の可能性
イプシロンの打ち上げで有名になった神秘的な夜光雲ですが、日没直後や日の出直前ならば見ることが出来るかも知れませんので、打ち上げ後、しばらく待機しましょう。
神秘的な夜光雲が撮影出来れば非常にラッキーです。
種子島のロケット光跡撮影!失敗しないための方法をEXIF付きで解説まとめ
ロケットの打ち上げは、明るい昼間に行われることが多く、夜間に打ち上げるのは2年に1回程度です。
ロケットの夜間打ち上げの場合は、光だけを捉える「光跡撮影」になりますが、詳しいやり方や注意点について、H2B-9号機の舞台を例に、記事にしました。
光跡撮影に必要な主なコツは、以下の通りでした。
- 適切な焦点距離を持つレンズの選定が必要
- 適切な撮影場所の選択が必要
- 適切な撮影の設定(バルブ撮影)が必要
もし、夜間打ち上げが今後あった場合、チャンスは打ち上げ1回につき1度だけですし、失敗してしまった場合、取り直しが出来ないのが、光跡撮影なのです。
今後も、ロケット光跡撮影に挑む方々のために、参考になるようにと記事としました。
撮影設定について、色々と試行錯誤するチャンスが全く無いのが「一発勝負のロケット光跡撮影」なのです。
この一発勝負に果敢にチャレンジする方のお役に立てることを祈っています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。