カワセミの撮影は、都内の公園などで、500mm以上の望遠レンズが有れば、誰でも比較的簡単に撮影がで煮るのですが、それは都会のカワセミが餌付けされているため、人間をあまり警戒しないためです。
種子島で、餌付けされていないカワセミの撮影に挑んでみましたが、実に困難を極めました。
まず、人や迷彩テントが見えるだけで、その場所には近寄ってこないのです。
約2か月間、野鳥撮影の困難さを体験して絶望しかけましたが、奇跡的に、種子島の公園でこのカワセミを撮影することに成功しました。
餌付けされていない野生のカワセミ撮影に挑んだ体験談について
都会の公園の池でカメラマンに大人気の飛ぶ宝石カワセミ
種子島のカメラマンですから、種子島の野鳥も撮っておきたいところです。
野鳥と言えば、カメラマンから大人気のカワセミです。
青に羽にオレンジ色の体が目を引きますから、木の枝に止まっているだけでも非常に美しい鳥です。
飛ぶ宝石とか渓流の宝石とも呼ばれるカワセミですが、羽や体毛事態に特別な色が付いている訳ではなく、いわゆる『構造色』という光の屈折等によりあの美しい色が出ているそうです。
英語で『KingFisher』って呼ばれる通り、カワセミは川で魚やザリガニなどを捕食しますが、高速で飛行して期の枝などに止まり、獲物を見つけると空中でホバリングして、一気に水面に飛び込んで魚をクチバシで捕獲します。
そして再び水面上に飛び立つ動作がカメラマンの心を惹きつけます。
都会の池では、でっかい望遠レンスを持った野鳥撮影の方々いますが、やはりお目当ては、このカワセミです。
餌付けされた都会の野鳥たち
都会のカワセミは、実はすっかり餌付けされていますから、人間がでっかいカメラを持って近づいても割と平気ですし、普通に数m程度まで近寄っても逃げない場合も有ります。
また、カワセミ以外の野鳥も、鳥たちにとって超絶おいしいらしい『ミルワーム』を使って、撮影ポイントに誘い出したりしてます。
都内などの公園でカワセミ撮影の名所は、撮影しやすい場所に絵になる止まり木を設置し、少し離れた水面下には小魚を入れたザルを設置して有ったりしますので、カワセミが止まる場所や水面にダイブする場所をあらかじめピンポイントで特定できます。
梅の木にカワセミなど、本来有り得ないのですが、人間の設定でどうにでもなってしまうのですし、水中のザルや木の枝に置いたミスワームが写ってしまったら消すことが可能です。
カワセミの水面ダイブの瞬間は、高速で飛ぶカワセミ君を追いかけることなく、ザルの上を狙ってピントもセットして固定しておけば、オキピン状態でカワセミが水に飛び込む時に高速連射することができます。
残念なことに、カワセミの長いクチバシが、この水中のザルに激突して折れてしまう場合が有り、クチバシが折れたカワセミの写真を見ると悲しくなります
都内近郊でのカワセミの撮影は、餌付けやカメラマン達の場所取り問題等は別にして、機材を揃えれば比較的簡単なのですが、ネット上にあるカワセミ写真の99%が、これらのヤラセ写真と言われているのもまた残念です。
種子島の川にも、カワセミが沢山飛んでいる
野鳥に興味がない方は、種子島の川の上を高速で飛ぶカワセミに全く気づいていません。
しかし、川辺で車の中から1時間ほど川の表面を観察していれば、何度かカワセミがその川の上を飛行していることが判ります。
車の中にいると、意外と警戒されないから不思議です。
カワセミは、人気のアカチョウビンとは違い、渡り鳥ではありませんからいつでも撮影が可能ですが、カワセミは川に沿って1kmくらいずつテリトリーが決まっているそうで、人間に対して警戒心が薄い個体に当たればかなりラッキーです。
カワセミを見つけるポイントは、カワセミが餌を取るために川に飛び込めそうな場所を見つけることです。
ざっくりですが、以下の場所がねらい目です。
- 川や池の岩や、川にせり出す木の枝周辺に、カワセミのフンの痕跡(白いペンキ状の斑点)が沢山あるエリア
- 川の流れが遅い、またはよどんでいる場所
- 水深が浅い場所
- 小魚が居る場所
多少水が濁っていても、カワセミには魚が見えるようですので、問題はなさそうです。
カワセミは、自転車のブレーキ音のような『キィー』と短く鳴きますので、ネットなどでカワセミの鳴き声をあらかじめ聞いておくと、発見に役立つかも知れません。
アカチョウビンも鳴き声で、島にいることが判りましたが、撮影はできませんでした。
ヤマセミは、種子島では見ることが出来ませんしたが、鹿児島の大隅半島の川の欄干で見つけましたので、近辺で粘ったのですが、結局撮影はできませんでした。
カワセミの写真に収めたい定番のショット
カワセミの写真はだいたい以下のショットになります。
- 魚を狙って木の枝などにとまっている
- 空中を飛んでいる(飛行速度が早いので難しい)
- ダイビング直前の空中ホバリング
- 水面にダイブした瞬間
- 魚をくわえて水面から飛び立つ瞬間
- 取った魚を、岩や木の枝にたたきつけている瞬間
- 魚を飲み込む瞬間
- 毛づくろい(木の枝が多い所でやります)
- オスがメスに魚を渡してプロプーズする瞬間
- 子育で、親子数匹が固まっている瞬間
カワセミの雄雌の違いは、クチバシの上下とも黒いのがオス、下のクチバシだけがオレンジ色なのがメスですのですぐに判別できます。
カワセミは、白い液体状のフンをしますが、魚などの消化できない部分は、固形物として固めて吐き出しますから、これらがカワセミを探す目安になります。
カワセミのプロポーズは、オスのテリトリーに入ってきたメスのカワセミを気に入って、魚を取ってきてメスの元に行き、メスがその魚を受け取ってくれたら求婚成功です。
オスの方が、ちょっとだけ魚採りは上手なのかもしれませんが、メスが飲み込めるのか心配になるくらい大きい魚をプレゼントしているようです。
カワセミの寿命は2年ほどと言われてますので、相手を選り好みすることはあまりないかも知れません。
カワセミの子供達も宝石のような外観ですから、家族で写真に収めることが出来れば最高です。
カワセミの巣は、蛇やネコが上がってこれない崖の途中や、カラスに見つかりにくい場所に有りますが、人間が巣を撮影しようと頻繁に近づくと、親鳥は子育てを放棄してしまう場合がありますから注意が必要です。
餌付けされていない野生のカワセミ撮影に挑んだ体験談、実際は厳しい
画角を計算すると、カワセミに8mくらいまでは近寄りたい
バードウォッチングであれば、カワセミが逃げない30mくらいの距離で観察できますが、撮影の場合、羽の質感まで写るよう、自前の機材では8m以内まで近づきたい。
できれば5m。
メジロなどは2mくらいまで近寄れますから軽く考えていましたが、実際に種子島で野生のカワセミを撮影すると、こんな考えが甘かったことが判ります。
現実は厳しかった。
餌付けされてないカワセミは、そもそも人の近くに来ない
種子島のカメラマンですから、種子島のカワセミを撮影しようと思い立ち、さっそく実行してみました。
毎日約2週間ほど、日の出前から、明らかにカワセミの餌場であるポイントにカメラを設置して待機しました。
カワセミは夜間は飛びませんので朝はおなかがすいていますから、日の出直後にいつもの餌場に来るからです。
しかし、カワセミが川の上を通過することは有っても、カメラの前でホバリングなど全くしません。
人間が座って構えているすぐ近くで、野生のカワセミが狩をすることは有りませんでした。
自然一杯の川ですから、少し離れた他のポイントで魚を取ればよいわけです。
『30m先に居るんだけど、こっち来ないなぁ!』という事の連続でした。
作戦変更して、迷彩テントで待機
テレビのドキュメンタリー番組で、数週間に渡る四万十川の野鳥撮影にうまくいかなかったため、都内の公園で撮影したカワセミ映像を流すも、視聴者にすぐにばれて炎上する事件が有りましたが、野鳥の至近距離での撮影は実に困難です。
※逆に趣味としてガッツリ撮ってる方も居ます
迷彩を施しても人が居るのはカワセミにとってバレバレでしょうが、迷彩テント内に待機することにしました。何回もカワセミと遭遇することで敵意はないアピールです。
レンズや三脚も迷彩シールをぐるぐる巻きです。
しかし、結果は玉砕です。
カワセミは私から30m以内には決して寄ってきませんでした。
警戒心が強いヤマセミは人間から100m以内には寄ってこないことは有名ですが、カワセミも30m以内には来ない様です。
2か月程度、撮影に臨みましたが、30m先の小さなカワセミの写真だけでは残念過ぎます。
発想の転換、種子島の公園の池で撮影
撮影は、蛍の撮影が出来る川辺などが中心でしたが、考え方を変えました。
公園の池をテリトリーにしているカワセミなら、ある程度人間に慣れているのでは?と。
何と、カワセミでなく人が寄ってくる
そりゃそうでしょう。変なカメラマンが公園の池に居るのですから。
早朝とはいえ、公園はジョギングや散歩している方が居ますし、池の畔に迷彩テントを張って望遠レンズを構えてる人が居たら、内地であれば通報されるレベルかもしれません。
そこは種子島ですから、『何してるの?』とお声がけされましたので、『鳥を撮ってます』と答えてました。
カワセミと言うと『セミの一種』と思われることが多く、青い鳥なんですなど説明が面倒でしたし、会話中はカワセミはまず寄ってこないからです。
最終的に、テントには『野鳥撮影中で~す』という張り紙をして籠ることになりました。
カワセミを狙った場所は、南種子町の宇宙ヶ丘公園に有る池です。
ちなみにレンズは、BORGを使用しています。
ついに奇跡が!
種子島のカワセミ撮影を諦めかけてきたころ、突然奇跡が起きました。
私のカメラの目の前、約15mくらいでしょうか、岩の上に『シュタッ!』という音と共に、カワセミが止まったのです。
驚きつつも震える手でシャッターを切り、照準器を見つめながら水面に飛び込む瞬間を待ちました。
どこの魚を狙っているかわかりませんから、ダイブする場所の検討もつきませんし、私の機材ではオートフォーカスもカワセミの動きにはついていけないでしょう。
それでも飛び立った瞬間から必死に連射です。
AF追従速度が遅く、ピンぼけ写真の大量生産でしたが、ファインダーでなく照準器を使っていた事や、ジンバル雲台を採用していたことから、1000mm超えの望遠レンズを高速で振り回せましたので、なんとかカワセミを画角内に収めることはできました。
実は、池の小魚を私の近くに集めるために、味噌を少々池に入れたのですが、これはプチテクニックです(笑)
都内の公園の池で撮影された写真には見劣りするかも知れませんが、ヤラセなしで撮影した種子島のカワセミ写真がこちらです。
反対側の岩です。
池に飛び込む前のカワセミのホバリングです。魚に狙いを定めます。
残念ながら、大多数の写真はピントが甘すぎてボツです、小魚の捕獲に失敗したり、はっぱをくわえてた場合もボツにしています。
カワセミを撮影されている方のなかには、魚の頭がこっちをむいてないとダメとか、胸のオレンジの毛のふさふさ感などいろいろこだわっている方も居ますが、バンバン撮影できる環境ではない私は、それどころではありませんでした。
撮影機材についてざっくり
カワセミを撮るために揃えた撮影機材は、ざっくりと以下の通りです。
- やたら重い三脚
- 安いジンバル雲台(レンズを自在に振りまわす)
- 安い照準器(カメラのファインダーでカワセミは追いかけられないため)
- 望遠レンズ(AF化したBORGを使用:35mm換算で1020mm)
- 双眼鏡(遠くのカワセミを発見するためのもの)
- イス・テント・迷彩ネット・蛇取り棒(マムシが出たらポイする道具)など各種小道具
- 虫よけスプレーは、鳥も嫌がるかも知れませんので一応我慢しました。
最高級の撮影機材を揃えれば、AF速度や連射速度も確保できたと思いますが、数百万円が必要で、正直なところ野鳥撮影は金次第と言う面も有りますが、手元機材で頑張りました。
シン・ウルトナマン特別版(4枚組)
餌付けされていない野生のカワセミ撮影に挑んだ体験談まとめ
仕事の出勤時間前の種子島の野生のカワセミ撮影は、撮れ高がないので心が折れそうでした。
しかし、30mほど離れた位置ならば撮れるチャンスは沢山ありましたので、望遠レンズは35mm換算で1600-4000mmは欲しい所でしたが、手持ちの望遠レンズ(換算:約1020mm)ではちょっと無理な感じでした。
小型CCDカメラにフィールドスコープの組み合わせで、超望遠にするのが、かなり有効なんだと感じましたが今更遅いです。
野鳥写真家の方々の御苦労が少しだけ判った気がします。
カワセミ撮影用にチューンした撮影機材が、のちに種子島のサーフィン撮影機材になるなんて当時は思ってもいませんでした。
サーフィン撮影用に使う場合は、強い太陽光に向かって撮影する場合もあるため、鏡胴内部の反所防止に遮光環を幾重も取り付けるなどの改造はしましたが、カワセミの動きに追従できる撮影の基本仕様が、プロサーファーさんの動きにも追従出来たことは収穫でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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