種子島のいつも静かな海が唸った日――種子島に最大級のうねりが来たあの日!
種子島のサーフィンカメラマン秘蔵の写真を、6年の歳月を経てここに公開します。
なお、地元の御意向により、撮影場所は非公開とさせていただきます。
種子島最大級の大波に挑んだ若きサーファー|島のレジェンドも見守った奇跡の1日
2019年10月12日(土)の早朝、いつものよう南種子町の竹崎サーフポイントへ!
まあまあ良い波、撮影も問題なさそう。しかし...何かがおかしい。
『これだけの波が立って、何故地元のサーファーさんが一人もいないのだ?』
カメラマンですから、違和感に気づきます。
地元のサーファーさん達は、きっと何処かにいるはず!島内ポイントを巡ります
いつものホテル前ポイント、でも何かおかしい!そう感じて、ホテル前ポイントからの移動を考えます。
ホテル前でも良かったのですが、なぜ地元サーファーさんが誰もいない?やっぱりおかしい。
これはカメラマンの直感です。うねり方向はだいたい、いつもと同じ感じ。
でも、いつもと違う、横からのおかしな第2波が重なっています。
これは、島のどこかで良い波が立っているのかも。
おかしなうねりと風向き、島の東海岸のどこかにいる!そして、北方向の東向き海岸への移動を決意します。
北へ向かう途中に見つけた、巨大なセット!
来たに向かう途中、種子島のサーファーさん達を発見。えっ?こんなところで何してる?それが本音でした。
車を止めて海を見てみます。
朝の静けさを破るように、種子島の海岸に突如として現れた“異様なうねり”。
長年サーフィンを撮り続けてきた私でも、これほどの波は見たことがありません。
天気図を見れば、遠くで発達した低気圧が生み出した巨大うねりが、ピンポイントでこの島を狙っていたようです。
風はオフショア。まさに完璧な条件です。
波高は予想を遥かに上回り、セットはダブルオーバーどころではない!3倍、いや5倍以上?遠くからみてもそんな感じなのです。
まさに“壁”のような波が、沖から押し寄せていたのです。
集結する地元レジェンドサーファーさん達と、ギャラリーに回るサーフィンの猛者たち
この情報はすぐに島中のサーファーの間に広まったのでしょう。
ギャラリーがどんどん増えます。
誰か入るの?私が到着した8:30頃は、そんな感じでした。
いつものようにそのポイントで波をチェックしたサーファーたち、口々に「これは無理だ」と言って浜に座り込みます。
ダブルサイズなら、普段真っ先に海へ飛び込むベテランたちも、この日は異口同音に“今日はギャラリーかな?”という感じだったのが印象的でした。
そんな中、更に1台また1台と車がやってきます。
見慣れたバンやボードキャリアをつけたバイク、降り立ったのは、今まで島のサーフィンシーンを築いてきたレジェンドサーファーたち。
その顔ぶれに、場の空気が一段と盛り上がるのを感じました。
彼らもまた、波を前にして静かに首を横に振ります。
「これはデカいな!」と、誰かがつぶやきました。
次々に折れるボード、立ちはだかる壁
9時を過ぎたころ、数人のサーファーが意を決して海へ向かいました。
ただし、その覚悟も一瞬でうち砕かれます。
ポイントを目指してパドリングで沖へ出るのに約20分、カメラマンは待っている間にお弁当を完食出来てしまうほど。
一本目のセットが来た瞬間、1人が板ごと吹き飛ばされ、ボードは真っ二つ、いや3つか?
超望遠レンズを付けたカメラのファインダーでも、遠すぎて良くわかりません。
続けてもう1人もリーシュを切られたのか?泳いで帰還。
でもサーフボードがバキバキに折れていました。
その波の厚み、スピード、パワー...どれを取っても、並の台風とは違った比較にならない凶暴さ。
レンズ越しにシャッターを切りながら、私はただ無力感を覚えるばかりでした。
これらの写真、広角レンズでの撮影ではないです。私のレンズは、1,020mmの超望遠でもこれです!
種子島の超ド級の大波に、木の葉のように舞うサーフボード1
種子島の超ド級の大波に、木の葉のように舞うサーフボード2
種子島の超ド級の大波に、木の葉のように舞うサーフボード3
種子島の超ド級の大波に、木の葉のように舞うサーフボード4
次々と自分の大切なサーフボードを折ってしまう種子島のレジェンド達
サーファーにとって、大切なサーフボード。
それをこんなに簡単に、しかもバキバキに折ってしまう波があるなんて。
折れたボードと破片を持って帰る彼らの無念さが伝わってきます。
種子島の空前絶後の大波で、大切なボードを2枚も折ってしまう地元の若者っサーファー
レジェンドサーファーも種子島の大波に大切なボードをバキバキに折られてしまう状況
若き挑戦者、ボードを2枚折られても再び海へ
そんな重苦しい空気の中、時刻は10時過ぎの事です。
ひとりの若手サーファーが再び海に向かって歩き出しました。
若き挑戦者は、持参した2枚のボードを全て折ってしまい、急いで家に帰って別のサーフボードを取ってきたのです。
以前使っていたのボードなのでしょうか。予備ボードでの大波への超戦、それでも彼は諦めませんでした。
空は20代前半。地元で生まれ育ち、波とともに成長してきた彼は、普段は寡黙で、決して目立つタイプではありません。
でも、サーフィンの実力は、サーフィンのメッカである種子島でも折り紙付き、そしてこの時の彼には迷いがなかったように見えました。
仲間が「もう無理しない方が...」とアドバイスする中、彼はただ「行くよ」とだけ言い、ワックスを塗る手を止めません。
そして、沖に出るまで、激しい逆流の中での長時間パドリング。
彼はあきらめず、ついにベストポジションにたどり着いたその瞬間――この時カメラマンは見ました!
『これはヤバい、最大級のセットが来た!』
奇跡の一本、島中が見届けた種子島の超大波に乗る若者の雄姿を!
大勢がこのシーンを見ていました。
そして彼のテイクオフは完璧でした。しかし、ボードを折りまくるこの波です。どうなる?
若者は、厚い壁のような急斜面のようなフェイスに一気に板を滑らせ、ボトムへ。
岸で見ていた誰もが息を飲みました。
誰も声を出さず、誰もがその瞬間を見逃さないようにと、静まり返るギャラリー。
私もファインダー越しに、手が震えるのを感じながら、シャッターを押し続けます。
超怒級の大波に挑む種子島の若者のテイクオフ
若者は、見事にテイクオフしましたが、右から『波に巻きこんでサーフボードを叩き折る』波が接近しています。
しかし、テイクオフの位置をちょっと変えたのでしょうか?
今までと違い、いきなり波に巻かれる位置ではないようです。
その波の下には、地元のレジェンドサーファーさんも見ています。
種子島最大級の大波に挑む若きサーファー1
超怒級の大波、遂にテイクオフしました。またボードを折ってしまうのか?
下の方では手を上げるレジェンドサーファーさんの姿が。
彼らは、岸から1kmくらい先ですので、もちろん何を言っているかは聞こえませんが、明らかに応援しているように見えます。
超怒級の大波に挑む若者、下では手を上げるレジェンドサーファーさんの姿が
超怒級の大波、巻き込まれるギリギリのコースで乗る若者と、手を上げるレジェンドサーファーさん
超怒級の大波に挑む若者、見事なテイクオフですが、後ろでチューブが牙をむき始めます
次第に牙をむく種子島の大波が彼を襲います
ここで、ボードをぶっ壊す種子島の大波の飲まれてしまうのか?緊張が走ります。
ここまでか!?種子島の大波に巻き込まれる若い彼、飲まれてしまうのか?
カメラマンのシャッターを切るのを一瞬やめてしまいましたが、なんと、襲い掛かる種子島の大波が作るチューブをくぐって、見事脱出してきたのです。
このチューブ、普段とは明らかに違い、アッというまにサーファーさんをもみくちゃにっしてしまうようです。
襲い掛かる種子島の大波が作るチューブから見事な脱出
彼はついに、種子島の超怒級の大波を乗り切ったのです。
その瞬間、岸壁で見ていた女性のひとりが目を潤ませていました。他のギャラリー達も、そしてカメラマンも。
見ていたギャラリーさん達からは、まるで『すげぇもん見せてもらった!』と言っているように感じました。
ここから、種子島レジェンドサーファーさん達の逆襲です
コツをつかんできたのか、海に出ていたサーファーさん達の逆襲が次々と始まります。
カメラマンから見て、『なんだかテイクオフの位置変えてきたかも?』と思わせるライディングです。
そっして、どんどん大波に乗り始めます。
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった01
完全に、この凶暴な波の最も危ない位置を回避してテイクオフしてますよね。(カメラマンの感想です)
コツさえつかめば、レジェンドサーファーっさん達のお祭り開始です。
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった02
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった03
実に見事な位置でのテイクオフ。画面右側の白い部分にいたらアウトでしょう。
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった04
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった05
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった06
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった07
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった08
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった09
転倒するかに見えましたが、持ち直します。
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった10
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった11
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった12
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった13
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった14
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった15
種子島最大級の大波、地元レジェンドサーファー達の逆襲が始まった15
種子島最大級の大波に挑んだ若きサーファー|島のレジェンドも見守った奇跡の1日 まとめ
自然はときに、人間の想像をはるかに超える力を見せつけてきます。
でも、その圧倒的な力の中で、人が立ち向かい、挑み、乗り越える姿こそが美しいのではないでしょうか。
あの日、種子島の若者は、波を制したのではなく、波と心を通わせたのかもしれません。
それをこの目で、またレンズで捉えることができたことは、サーフィンカメラマンの私にとって一生の誇りです。
またいつか、あの波が来るかもしれない。
でも次に挑むのは、この記事を読んでくれているあなたかもしれません。